みんふる

空白の3年をつなぐ、
仮設レストハウスに託された役割

2018.09.27

上士幌町には日本一広い公共牧場「ナイタイ高原牧場」があります。

総面積約1,700ha、東京ドームおよそ385個分の広さを誇る敷地内には、約2,700頭の牛が飼育されており、春から秋にかけて牧場のいたるところで牛が放牧されている様子を見ることができます。

まさに北海道らしい景色を望める場所として、毎年たくさんの人が訪れる人気の場所です。

 

頂上まで登ると、一軒のレストハウスがあり、そこでは特産品である十勝ナイタイ和牛や十勝ハーブ牛を使ったハンバーガーなどの食事を楽しむことができます。

 

実はこのレストハウス、平成27年10月に北海道十勝を襲った台風23号の強風に遭い、屋根が剥がれ落ち、ほぼ全壊に近い被害を受けました。

 

そのため現在は、仮設店舗での営業をしており、この建設費用の一部に皆さまからお寄せいただいた寄付金を活用させていただいております。

 

 

今回は、この仮設レストハウスについてご紹介します。

誰もが待ち望んでいたレストハウスの復旧

行楽シーズン中の出来事でしたが、とても営業再開できる状態ではなく、そのまま営業中止に。被害が拡大しないように止む無くナイタイ高原牧場の入り口も閉鎖となりました。

 

当時のことについて、レストハウスを経営する野村和茂さんにお話をお伺いすると、

「ここは、季節によって景色がガラッと変わるため、シーズン中、何度も足を運んでくれる方も多く、秋の景色を楽しみにしていた方々にはとても申し訳ないと思いました。」と悔やみきれない表情を浮かべる野村さん。

 

 

突然の出来事だったため、復旧費用をすぐに算出できず、復旧の方向性はなかなか決まらなかったそうです。

また、安全面を考慮し、解体も検討されました。場所を移動して建て直す場合は水回りや電気配線などの設備を再調査する必要があったため、作業が長期化する可能性が濃厚に。翌年の行楽シーズンまでに営業を再開することは厳しい状況でした。

 

「大自然に囲まれながら美味しいものを食べて、リフレッシュしてほしい。ここのレストハウスはそんな思いで設置されました。なので、建て直している間せっかく訪れてくれた方々に何も提供できないと思うとやり切れない気持ちでいっぱいでした。」と野村さんは言います。

 

取材に訪れたこの日も、店内で昼食を取る人や、ソフトクリームを片手に外のベンチに腰掛け、のんびりと景色を眺めている人など、思い思いに過ごしている様子が伺えました。

 

 

日々、このような光景を見て来た野村さんにとって、レストハウスの長期的な休業は誰よりも不安だったと思います。

 

しかし、危機感を募らせていたのは、町民も同じだったようで、町民からも早い営業再開を希望する声がたくさん上がってきたそうです。

 

そこで、翌年2月に仮設レストハウスの建設が決定し、次の行楽シーズンに向けて急ピッチで作業が行われ、平成28年4月29日無事に営業を再開することができました。

 

「この町の魅力を一度に体験できるところが、ナイタイ高原牧場の良いところなので、休業期間を最小限に抑えることができて本当に安心しました。」と野村さんはホッとした表情で話してくれました。

 

 

仮設レストハウスが教えてくれたこと

仮設レストハウスによる営業を再開して今年で3年目。

店内の大きなメッセージボードには、多くの人からいただいた応援メッセージがたくさん掲出されていました。

 

 

この自然災害を機に、この場所がたくさんの人に愛されていることを改めて実感することができました、とメッセージボードを眺めながら野村さんはおっしゃっていました。

 

 

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新しいレストハウスは平成31年4月28日にオープン予定とのこと。

それまで、この仮設レストハウスは町の美味しい魅力を人々に発信する役目をしっかりと果たしてくれています。

 

「せっかく長い道のりを走ってきたのに、頂上にトイレしかなかったら、かなり寂しいですよね(笑)今までのように滞留してもらえないだろうなあ。たくさんの人にまた来たいなと思ってもらうために、これからも美味しい食事を用意してお待ちしています!」と野村さんは笑顔でおっしゃっていました。

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