みんふる

プログラミング的思考とは?
考える力が子どもの未来を変える

2020.01.21

コンピュータをはじめとする情報技術が、現代の情報社会を支えていることは言うまでもありません。教育現場でも、文部科学省の学習指導要領に基づき、2020年度から小学校でのプログラミング教育が必修化されます。これを受けて上士幌町では、ふるさと納税の寄附金を活用した「プログラミング教育推進事業」に取り組み始めました。ソフトバンクのPepper社会貢献プログラム2により学習教材ロボット「Pepper(ペッパー)」を上士幌小学校に6台、糠平小学校に1台、上士幌中学校に3台導入。ICT(情報通信技術)教育環境(パソコン、タブレット等)を整備するとともに、外部講師を招いたプログラミングのクラブ活動も実施しています。今回は糠平小学校と上士幌小学校を訪れ、実際に取り組んでいる内容について伺ってみました。

いち早く授業に取り入れた 来春閉校する糠平小学校

町の教育委員会から勧められ、いち早くプログラミングの授業を始めたのは糠平小学校でした。「当校は来春2020年の3月に閉校する予定で、現在小学4、5年生が各1名、6年生が2名おります。児童数が少ないため、授業に取り入れやすかった一面もあります」と目黒雅博校長。
最初、プログラミング教育担当者等を対象とした「小学校プログラミング教育担当者等セミナー」を受けてから、指導要領やマニュアルに沿って指導を始めたそうです。子ども達はペッパーの胸のディスプレイを使って、計算問題を解いたり、英会話をしたり、自由に触れ合うところからスタート。その後、子ども向けのプログラミングツールを使ってペッパーに指示を出し、「お辞儀をしておはようと話す」「円を描く」などができるようになっていきました。

理論的に順序よく考えて試し 自分の意見を説明できる力を養う

そもそも文部科学省が必修化する狙いは、パソコンを使うスキルを身につけるというだけではなく、「プログラミング的思考を養うため」と言われています。「プログラミング的思考とは、理論的に順序よく考えて試し、物事を解決するにはどうするかを見つけることです。幼少時代、ラジコンカーにカードを入れて走ったり、曲がったりしていた作業は、今思えば自分にとって初めてのプログラミングでした。発想を生かし、コースを作るなどの遊びが、まさにプログラミング的思考だったのだと感じます」と目黒校長。

子ども達はペッパーを使って体験しながら楽しく学ぶ中で、新しいことにチャレンジし、理解を深めていきます。プログラミングの技術や知識に走るのではなく、その過程で考える力を養うこと。そしてみんなで話し合い、思った通りに動かなくても、自分の考えを他人にわかりやすく説明する力をつけること。それこそが大切であり、「一生懸命考えて、きちんと自分の意見を言う、そんな成果が見られると感動しますね」と目を細めます。

授業内容がデータ化され、先生の負担軽減効果も

一方で、ペッパーが来たことで、先生方にも良い影響がありました。プログラミング授業に関する先生方の負担が減り、子どもと接する時間が増えたことです。もちろん新事業なので、最初はやるべきことも増えましたが、プログラミングの授業内容がすべてデータで保存され、いつでも引き出せる状態なので、次回の授業の準備がスムーズになったといいます。

閉校間近ですが、子ども達の可能性を信じ、積極的に授業を進める糠平小学校。「プログラミング的思考は、あふれる情報を活用する能力を高め、物事を考える時の基礎となるはず。今後、本校4人の未来を変えてくれると思っています」と目黒校長は力強く話してくれました。

上士幌小学校ではクラブ活動をスタート 専門学校生の協力で楽しい学びに

次にお邪魔したのは、全校児童数219名の上士幌小学校です。教頭の和嶋康彦先生も、プログラミング指導担当の教諭とともに「小学校プログラミング教育担当者等セミナー」を受講。その中で、目標の動きや形を頭にイメージしながら、順序立てて作っていく作業が、ものづくりなどの遊びと本質的に共通する部分が多いと感じたそうです。何度もリトライして作った結果、目指した通りの形が完成。その成功体験を重ねることで、次のステップへどんどん進むことができる内容だったと振り返ります。「子ども達が創造性を高め、新しいことを発見できるのはいいことですね」と近藤弘子校長も子どもの成長に期待を寄せます。

 

現在、授業外のパソコンクラブ活動という形で「プログラミング教育」を進め、帯広コア専門学校の学生を招き、サポートをお願いしています。クラブ活動には、小学校4年〜6年生17名が参加。2019年5月からパソコンやペッパーの基本的な操作方法を学び、タイピング練習のための名刺作りを行って、9月に初めて帯広コア専門学校生6名を派遣いただき、「ペッパーを動かそう!」をテーマに指導をしました。

「学生さん達はじかにペッパーを操作したことはありませんが、中に入っているソフトに関しては詳しいので、教え方が的確でした。パソコンは授業で1人1台使えるよう整備しています。子どもから『これはどうしたらいい?』など出てくる課題に対して、ふだんは専門の教師3名で対応していますが、学生さん達がサポートしてくれたので、子ども達は聞きたいことがすぐに聞けて、ストレスなく自分の学びを深められてよかったと感じています。また、子どもにとっては、自分に近い年代の人がパソコンの使い方を教えてくれるので親しみやすく、自分の未来像を具体的に想像できるメリットもありました」と教頭の和嶋先生は話します。

思った通りに自分で操るまでの 大変さと楽しさを実感

最後に子ども達は、自分たちで作ったものを発表。セリフやジェスチャーを組み合わせ、時には効果音を使い、音と動きとセリフをペッパーで表現していたそうです。
実際、子ども達はこの活動でどんなことを感じたのでしょうか。

活動後の感想コメントでは、「これまでペッパーと会話をすることはあったが、ソフトを動かす経験は初めてだった。操れたことが楽しかった」「キーボードでローマ字を打つのは難しかったけど、いろんな風に操れて面白かった」など、自分でペッパーを操って動かすことができた喜びの声が多く寄せられました。

「子ども達は自分で考えてパーツなどを選び、友達とは違うオリジナルの案を表現し、笑いを取るなど周りの反応にやりがいを感じているようでした」。教頭の和嶋先生は、この活動によって、子どもたちがプログラミングに興味を持ち、確実に自分でできることが増えたと実感しています。

子どもたちの成長を感じられる ペッパーの導入に感謝

糠平小学校でも上士幌小学校でも、子ども達はみんなで意見を出し合い、試行錯誤する中で、互いにスキルを高め合っています。両校の先生方は「きっかけとして、ふるさと納税寄附金によりペッパーを導入した効果が現れていると感じます」と感謝します。「今後も人とのつながりや、ものづくりのプロセスを大切にしながら、未来を切り拓くプログラミング的思考を深めてもらえればいいですね」と来年度に向けての展望を語ってくれました。

 

 

★上士幌小学校
上士幌町字上士幌東1線233番地
TEL 01564-2-2015

 

★糠平小学校(2020年3月31日閉校)
上士幌町字ぬかびら源泉郷
TEL 01564-4-2054

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